人や動物の細胞のなかで、エネルギーを作り出しているのがミトコンドリアという細胞内小器官です。
ミトコンドリアは、摂取された栄養分から取り出される水素と呼吸によって取り入れられる酸素とを反応させ、そのときに発生するエネルギーを使ってATP(アデノシン三リン酸)という物質を合成します。
ATPは神経細胞が興奮したり筋肉が収縮したり、肝臓が物質を合成したりするときに消費されます。大量のATPを細胞内にためておくことはできません。
そこで、ATPの必要量に応じてミトコンドリアは水素や酸素を速やかに反応させたりあるいはゆっくり反応させたりして、呼吸の速度を調節しています。
運動をすると呼吸や心拍が激しくなり、休むと次第に収まります。これはミトコンドリアの活動を反映しているのです。
その役割からミトコンドリアをエンジンにたとえることができます。このエンジンの設計図は、ミトコンドリアの中のDNAと核の中のDNAに分かれて保存されています。
エンジンに必要な部品は、ミトコンドリアDNAと核DNAに即してミトコンドリア自身のタンパク質合成装置と細胞質のタンパク合成装置によって作られます。
細胞膜のタンパク合成装置によって作られた部品は、ミトコンドリアの中に運ばれていきます。
この二系統の遺伝子産物が組み合わされてエンジン(ミトコンドリア)が出来上がります。
車のエンジンは完全燃焼しているならエンジン内に燃えカスが蓄積せず、排ガスも無害であるに違いありません。
残念ながら実際にはそうではなく、定期的な整備や関連用品の補充や交換が必要であり、それを怠るとエンジン本来の性能を発揮することができず、逆に過度の熱、有害な煙などを発生し、ついにはエンジン停止とならざるを得ません。
のみならず周辺の環境へも悪影響を及ぼします。
ミトコンドリアは、37度前後という温和な条件で水素と酸素を反応させています。車のエンジンとは比べ物ならないほど効率よく水素と酸素を反応させています。
とは言っても生命活動を維持するため絶え間なく活動し、また様々な事情(摂取栄養素、体調)によりミトコンドリア内での水素と酸素との反応が常に完全というわけではありません。
車のエンジンと同じように、いやそれ以上に定期的な整備や栄養素の補充が必要となります。
この整備や補充を怠るとミトコンドリア内での水素と酸素との反応が不調になり、その結果酸素がイオン化し活性酸素(フリーラジカル)が発生します。
ミトコンドリアは、細胞内における活性酸素の主要な発生源になっています。この活性酸素がミトコンドリアのたんぱく質や脂質を攻撃します。
この状態が蓄積されると、活性酸素がミトコンドリアの設計図であるDNAを攻撃し、悪影響を与え始めます。
加齢とともに活性酸素によりミトコンドリアDNAへの悪影響が蓄積され、ミトコンドリアからの活性酸素の漏出が増大し、それが細胞機能そして人体機能に悪影響を与えるという「老化現象」は多くの観察から支持されています。
人体のエンジンに相当するこのミトコンドリアが本来の性能を常に発揮できるように定期的な整備と補充を行えば、老化防止が可能と言えます。
このミトコンドリアへの整備という面を下記サプリメントで行うことができます。
アセチルL-カルニチン、R-リポ酸、コエンザイムQ10がミトコンドリアの機能を改善し、またカルノシン、ロディオラ・ロゼアはミトコンドリアのダメージを回復させるのに役立ちます。
また、最近注目されている成分にPQQ(ピロロキノリンキノン)という成分もあります。
ミトコンドリアがアンチエイジングの決め手 |
■R-リポ酸(R-Lipoic Acid)
R-リポ酸とアセチルL-カルニチンは、アンチエイジング栄養素のとてもマッチした二重奏者のようです。アセチルL-カルニチンのように、R-リポ酸はミトコンドリア内でのエネルギー生成反応に関与しているミトコンドリアの天然の代謝産物です。
リポ酸は、ミトコンドリアのエネルギー精製において生じるフリーラジカルからの攻撃を防御します。R-リポ酸の「R」は生物学的に活性状態にあることを意味します。(参考:アルファリポ酸はR-リポ酸とS-リポ酸からなっています)
そして、ミトコンドリア機能においてアセチルL-カルニチンとR-リポ酸二つの成分の相乗効果を決定的なものと結論できる膨大な研究成果があります。
記憶力の改善、老化からくる耳の障害改善、酸化ダメージの減少などが報告されています。また、リポ酸は、ミトコンドリアの老化からくる構造的劣化を防ぎ機能を最適に維持する助けをします。
アセチルL-カルニチンのように、R-リポ酸は脳細胞膜をスムーズに通過し、通常細胞と同様に脳・神経細胞にとっても有益です。また、R-リポ酸は
強力な抗酸化剤であり、自ら抗酸化力を回復できるだけでなく、抗酸化力を使い果たしたビタミンCやビタミンEなどの抗酸化機能を回復させる働きもします。
グルタチオンは、有害物質の除去、妊娠中毒、薬物中毒予防などの解毒作用と免疫作用において決定的な役割を果たすと認識されている栄養素です。しか
し、このグルタチオンは胃腸内で分解されやすく経口摂取では限界があります。一方、R-リポ酸はスムーズにグルタチオンを吸収し、体全体に配分する働きを
します。
(参考:グルタチオンはビール酵母に沢山含まれており、ビール酵母健康補助食品もグルタチオン摂取に有効な手段だと言われています。)
これらの、重要な抗酸化剤が最適レベルに維持されることがミトコンドリアの構造と機能を最適に維持するために必要であり、ひいては長寿に繋がると考えられています。
■L-カルノシン(L-Carnosine)
フリーラジカルと同様に老化を進めるもうひとつの物質があります。それはAGEs(Advanced Glycation End Products)と呼ばれるものです。AGEsは体内で炭水化物とたんぱく質が酵素を介在せずに化学反応する際に生じる物質がさらに組織たんぱく質と結合したものです。このAGEsはたんぱく質自体とその組織の構造や機能に有害な影響をもたらします。
例えて言えば、なんらかのスパイスや調味料を使わずに上質の肉と砂糖を混ぜてオーブンで長時間暖めることを考えてください。その肉の匂い、感触、味はどのようなものしょうか? 人体はある意味で37度という低温度で80年前後調理しているようなものです。
たんぱく質は人体のいたるところに存在していますので、このAGEsの破壊的可能性は明らかです。加齢に伴いフリーラジカルとAGEsとが相互作用を起こし、より大きな破壊をもたらします。
すなわちAGEsやフリーラジカルが細胞や組織に蓄積されるにつれ、分子レベルでの破壊そしてDNAレベルでの破壊へと拡大して行き、老化現象が顕著になります。糖尿病、アルツハイマー、ガン、心臓病等です。このAGEsを抑制すると考えられているのがカルノシンです。
カルノシンはβアラニンとヒスチジンという二つのアミノ酸からなるジペプチドであり、脳、心臓、胃そして特に多く存在する物質で抗酸化作用を持っています。激しい運動が行われるときは、脂肪より筋肉や肝臓に蓄えられている糖分がエネルギー生成のために燃焼されます。(酸素が不足している状態での糖質代謝:嫌気的解糖。その結果乳酸が増加します。
この乳酸はプロトンを増やすために、筋収縮機能低下、糖質代謝抑制が起こります。動物実験によると、カルノシン投与のマウスは運動による筋肉中の過酸化脂質の増加が抑制され運動の持続力が高まることが示さされています。
■ロディオラ(Rhodiola)
ロディオラは、ストレスに対する抵抗力を強める機能があり、体のエネルギーを高め、広くを軽減し回復する働き、運動能力や精力を増強する作用、また記憶、学習の能力を向上させる働きも報告さsれています。肝機能や心臓を強化する根拠も示され、細胞内DNAを効率よく修復する作用でガン予防にも大きな期待が寄せられています。
ラットによる最新の研究によると、疲労したラットにロディオラを与えるとミトコンドリア内でのATP合成が高まり、対象ラットと比較して実に24%4もより長い時間泳ぐことができたと報告しています。また、ストレス状態での広くを軽減し抗炎症効果も示されました。
コロンビア大学の精神医学助教授であり、また「ロディオラ革命」の著者であるリチャード・ブラウン博士は、ロディオラをエネルギー高揚とうつ病、慢性疲労の治療に推薦しています。ロシアの医学部学生を被験者として行われたダブルブラインド・プラシボコントロール実験によると、ロディオラ抽出物はストレスと疲労の極限状態の下でも要求される仕事を行う精神力を強めることが報告されています。また同じようにコントロールされた学生たちの実験結果があります。
それは負担のかかる試験期間に行われたものですが、ロディオラを摂取した学生たちは、摂取しなかった学生と比べ肉体的にも精神的にもすばらしい出来栄えであったと研究者らは報告しています。これらからロディオラの有益な可能性として、脳内セロトニンやノルエピネフリンのレベルを高め、活発さをもたらし、天然の気分高揚剤と言えます。